2015.12.03
仕事を休んで集計作業しても無報酬。みんなで考えたい…『ベルマーク』って本当に必要?
クリスマス間近ですね。ベルはベルでもベルマークの話題。今、ネットなどでベルマーク運動が「本当に必要なのか」と疑問視する声が上がっています。わが子が入園して、「まだ続いていたの?!」と驚いたママも多いはず。
賛否両論があるこの問題。3人の子をもつ筆者自身も幼稚園でベルマーク集計の経験あり。ベルマークについて一緒に考えませんか。
仕事を休んでまで…。
「仕事を休んでベルマークの集計に行くけど、本当に効率の悪い作業…」と嘆くのは園児を抱える30代のワーキングママ。子どもの通う幼稚園でベルマークの集計担当になっていて、担当日は仕事を休んで園へ足を運ぶといいます。ママ友の目もあり、「毎回欠席するわけにはいかない」のだとか。
子どものころ、熱心に集めたベルマーク。自分の子どもが入園して、「まだ続いてたんだ!」と驚いたママも多いはず。あのアナログな集め方、このデジタル時代の今も、脈々と受け継がれているのです。
幼稚園や学校で備品などを購入するためにPTAが中心となって集めていますが、本当に必要なのか疑問視する声が上がっています。
こんなに大変!集計の現場
ベルマークの集計作業、実際に参加すると、なかなか骨の折れる作業だということが分かります。
集める→切る→仕分け→計算→整理袋→送る→預金で買い物…とアナログな作業が続きます。
回収した一枚一枚を枠のサイズに合わせて切り取り、社名毎に分類する作業は時間がかかります。
中には洗っていないベタベタしたものや臭いものがあったり、マヨネーズの袋など軽いマークが鼻息で飛んでしまったり、小さすぎで社名の番号が判別しづらいものもあったり…。時には家に大量のベルマークを持ち帰って夜な夜な仕分け作業をすることも。
もちろん報酬はゼロ。しかし、どんなに細かい作業をしても、年間の集計点数が大金に替わることは「ない」といっても過言ではありません。
ベルマークでどれだけの利益があるの?
都内のある幼稚園。昨年度およそ200人の園児を抱えていますが、集計結果は28000点ほど。大まかに計算すると一人当たり年間140円という結果でした。
ベルマーク教育助成財団が公表している2014年度の都道府県別上位校を見ても、例外はあるものの、年間10万円台かそれ以下がほとんどです。
ベルマーク預金で購入するものは、現実にはせいぜい運動器具数点ほど。活動に参加したママたちの人数、かかった時間、国が定める最低賃金時間額を計算すると、それを上回る利益がベルマークで集まるはずもありません。
運動器具などは幼稚園の備品になるわけですから、「幼稚園が購入すべき」という声も。
そもそも『ベルマーク運動』とは?
「すべての子どもに等しく、豊かな環境のなかで教育を受けさせたい」と1960年に始まったベルマーク運動。ベルマーク教育助成財団のHPによると、ベルマークには「自分たちの学校づくり」と「お友達への教育援助」の2つの機能があります。
マークを集めて財団に送ると「1点=1円」のベルマーク預金に。 その預金で、自分たちの園や学校に必要な設備・教材が「協力会社」から購入可能になります。
さらに、購入金額の10%がベルマーク財団に寄付され、教育援助活動に使われます。自分たちの利益だけでなく、へき地学校や開発途上国の子どもたちの援助になる仕組みになっているのです。
商品にマークを付けている協賛会社にとっては、商品の知名度アップ、企業のイメージアップにつながるメリットがあります。
集めるためにわざわざ高いものを?
マヨネーズ、ラップ、ポテトチップス…ベルマーク収集歴5年の筆者は、ベルマークの付いた食品、生活用品を買う習慣が染みついています。
“商品を選ぶ基準”は本来、値段や品質といった価値判断だと思うのですが、“ベルマークが付いているかいないか”がいつの間にか基準となっています。というのも、毎月園から持ち帰る「ベルマーク集計袋」を空っぽで子どもに持たせるわけにもいかないからです。
集計に参加してみると、ほかの家庭でも同様の消費行動がみられます。
参加企業からしてみれば、ベルマークは「絶大な宣伝効果」というわけですね。
「では来年度からやめましょう」と言えない実態
「こんな非効率な作業、やめたら?」と考える人もいるとは思いますが、なかなか声高に言えないのが実態のよう。 大事なわが子が通う幼稚園。「ママたちとの仲をこじらせたくない」というのが本音。
「子どもが集めるのを楽しんでいる」「ママ友ができる」「幼稚園のためならやれる」など、賛成意見も根強いといいます。へき地などの教育支援という側面を重視するママも。
企業ならば、利益追求のためにリーダーが中心となって制度の改変をしていくものですが、毎年トップや役員が変わるPTAという特殊な組織。「前年の踏襲」が基本となってしまうのは、こうした背景が影響しているようです。
話題の「今」が再考のタイミング!?
とはいえ、何も声を上げないと、ずっとそのままになってしまいますよね。いきなり変えるのではなく、まずは話し合いの場を持つことは大事です。
今、ベルマーク問題が社会問題化してきています。話題になっている「今」が、再考のチャンスかもしれません。昔と比べ、ベルマークを集めていない小学校も増えてきているようす。
核家族、共働き…昔ほどママも融通が利かなくなり、PTA役員の仕事は適宜減らしていくべき時代ではないでしょうか。へき地への援助の募金など、代替案も必要ですね。
参照/ベルマーク教育助成財団
大楽眞衣子
横浜市出身。大学卒業後、大手新聞社の記者として勤務。数年間の記者経験を経てフリーライターに。実家から遠く離れた静岡県で、3歳5歳7歳の男の子3人を子育て中。長男出産か...
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