2019.06.04
潮干狩りの貝を食べて中毒症状!?『貝毒』の危険性とは
初夏といえば潮干狩りのベストシーズン。みんなで採った貝はひときわおいしいものですが、一つ心配事があります。それは『貝毒』のこと。
今年3月には大阪府の海岸に自生するムール貝を食べた人が、手や口のしびれを訴える被害もありました。ここでは貝毒の基本情報や、安全な貝を採るにはどうすればよいのかをお伝えします。
近年貝毒被害が続出中
貝毒とはアサリ、カキ、ホタテガイなどの二枚貝に蓄積する毒のこと。原因となる毒素を持った植物プランクトンを餌として貝が食べ、その毒が貝に蓄積し、人間が食べるという食物連鎖の中で、食中毒症状を起こします。貝の毒素は加熱しても毒性は消えません。
日本では1970年代の後半、東北地方で貝毒食中毒が多発したのを契機に規制値が設定されました。その規制値に基づいて注意令が出される仕組みですね。
しかし2000年代に入ってふたたび発生が顕著になり、2017年頃から食中毒被害が続出。今年も消費者庁や農林水産省、大阪湾や瀬戸内海を臨む自治体が注意を呼び掛けています。
貝毒で食中毒になったら、どんな症状が出るの?予防法は?
貝毒には下痢性貝毒と麻痺性貝毒の2種類があります。
下痢性貝毒は食後30分から4時間で発症し、下痢(水様便)、吐き気、おう吐、腹痛の症状があらわれます。通常は3日以内に回復し、死亡例はありません。
一方、麻痺性貝毒は食後30分程度で発症し、舌、唇、顔面、手足のしびれ、運動失調の症状があらわれます。重症の場合、呼吸麻痺で死亡することもあります。残念ながら治療薬はありません。
現在食品衛生法で定められている“二枚貝等の可食部に含まれる毒量の規制値”は、このような貝毒による食中毒を防ぐためのもの。
消費者庁・農林水産省によると、有料の潮干狩り場であれば安全性を確認しながら営業しているので、そこで採取する貝には貝毒の心配はなく安全だということです。
しかし、無料の場所で採取したり、自生する貝を採取したりするような場合は要注意! 貝毒による食中毒リスクを考えると、潮干狩り場選びは慎重に考える必要があります。
大阪湾で現在注意令が!
大阪湾では2013年から毎年、アサリやトリガイから貝毒が検出されています。アサリの場合3月~5月下旬にかけて多く発生が見られますが、2018年は2月にも発生しており、貝毒発生地域も拡大して、兵庫県の東部・西部や岡山県東部でも30数年ぶりに確認されました。
大阪府では、有料潮干狩り場でもせっかく採った貝を持ち帰らせることができず、九州産の貝と交換したというニュースが記憶に新しいですね。2019年も大阪湾に生息する2枚貝から規制値を超える貝毒が検出されました。
プランクトンの量をモニタリングしている大阪府立環境農林水産総合研究所によると、近年は工場からの不正な排水がなくなり、大阪湾の水質が浄化されたことで海中の栄養素が減り、低栄養でも増殖できる有毒プランクトンが増えた可能性があるそうです。
実際2018年4月上旬にはアサリから、体重60kgの成人が8個以上食べた場合に死に至る恐れがある強い毒性が検出され、年々毒が強くなっていることもうかがえます。
貝毒の注意令(規制)が解除されるには、大阪府が毎週実施している検査で3週連続毒が規制値以下になる必要がありますが、2019年に検出された貝毒で解除されたのはシジミだけ(5月7日)。
現在毒性の数値は減少しているものの、アサリは5月中、アカガイとトリガイは6月まで規制がかかるとみられます。
貝毒対策は、事前の情報確認しかない!
PHOTO/koss13/Shutterstock
最後に、スーパーに並ぶ二枚貝は大丈夫なのでしょうか?
農林水産省が発表した貝毒情報、『健康に悪影響を与える可能性のある魚介類中に含まれる物質について』によると、「都道府県では、安全な貝類が出荷されるよう、貝毒の発生を監視し、出荷前に検査し規制値を超える場合には出荷を規制しています。これらの対策によって、近年は、市販されている貝類による食中毒は報告されていません。」とのこと。
市販品であれば安心して食べることができそうですが、潮干狩りで採る場合は必ず安全検査を行った場所で採るようにすることが大切です。
貝毒の検出事例は大阪湾以外でも近畿地方を中心にありますので、特に無料の潮干狩り場では、必ず事前に都道府県の情報を確認するようにしましょう。
潮干狩りは初夏の楽しい家族レジャーのひとつですが、安全な貝を採るには、貝毒の知識や事前の下調べが欠かせません。
これから潮干狩りを予定している家庭は、特に河口などで自生している貝、無料の潮干狩り場の貝などは避け、採取する場所の貝毒情報もしっかり事前確認したうえで楽しんでくださいね。
TOP PHOTO/Arthur Villator/Shutterstock
参照/
大阪府立環境農林水産総合研究所「貝毒に注意しましょう!」
日本経済新聞「貝毒に注意 大阪湾で例年より毒性強く、瀬戸内海でも確認」
産経新聞「潮干狩り『貝毒に注意』 消費者庁が呼び掛け」
農林水産省「貝毒の規制値」
農林水産省「消費者相談」
東京都産業労働局「二枚貝類の貝毒調査結果について」
mamaPRESS編集部
mamaPRESS編集部です!“「ママ」であることをもっと楽しみたい!輝きたい!”そんなママたちのために「ママ」が知りたい情報だけをお届けしています。mamaPRESSを読むことで、心に...
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