2017.01.07
読み聞かせは子どもの心にどう残る?子どもに絵本の思い出を聞いてみた!
最近、読み聞かせに関する興味深い本を見つけました。福音館書店 山口雅子著『絵本の記憶、子どもの気持ち』という本です。
絵本の著者である山口雅子氏は東京子ども図書館設立、児童図書館活動に関わり子どもと本との橋渡し役として長く活躍されてきました。現役を退いた今も学習院大学で非常勤講師をされています。
この著書は、山口氏のゼミの学生たちの絵本の思い出のレポートから、子どもの絵本に対する思いを探っています。子どもの思いを垣間見ることのできる貴重な一冊について少しご紹介します。
絵本の記憶は絵やフレーズをきっかけに泉のように湧き出る
山口氏が“絵本の思い出”の課題を出した当初、学生たちは、ほぼ全員「覚えてない」と騒然としたそうです。しかしレポート提出時には全員が鮮明に思い出していたそう。どうして思い出したのかというと、絵本の表紙や挿絵を見たとたん、絵本のストーリーが懐かしさとともに記憶の中から泉のように湧き出てきたのだそうです。
絵本のことを考えていたら大好きだったフレーズが口をついて出てきて一気に思い出したという学生もいました。絵本のことは忘れていたわけではなく、心の奥底に深く眠っていたのでしょう。人の記憶とは不思議で感動的なものなのですね。
記憶の奥深くに眠るのは、読み聞かせをしてもらった記憶
さらに、思い出深い絵本とは、読み聞かせの記憶とセットになっているようです。大きなかぶの「うんとこしょ、どっこいしょ」のフレーズで思い出したという学生は、この一節が「母の声で私の耳の奥から突然響いてきた」と書いていたそうです。
「お母さんの声が蘇ってきて絵本を思い出した」と書いている人は多かったそうですが、ほとんどの学生が思い出したと同時に「温かくホッとするような気持ちになった」と綴っています。
実際に我が子たちに絵本の思い出を聞いてみた!
そこで筆者も我が子たちに絵本の思い出について聞いてみました。
『お月さまこんばんは』
子どもたちが3人とも「大好きだった!」と最初に挙げた1冊です。0歳からの絵本で、起きている時間が長くなった生後3、4ケ月頃からよく読んだ、子どもたちのファースト絵本です。
「お月さまのお顔が不思議と思って見てた」、「お月さまの笑った顔が大好きだった」、「お月さまが雲さんに隠されてどうなっちゃうかと思った」と話してくれました。
『がたんごとん』
次男が生後6ケ月頃に買った、次男の一番のお気に入りの絵本です。「どういうところが好きだったの?」と尋ねると、「最初から最後まで『がたんごとん』の音が流れて、その音が心地よくて大好きだった」と話してくれました。1歳を過ぎた頃に、いきなり「がかん、ごこん」と絵本を見ながら言って驚いたことを覚えています。
『しゅっぱつしんこう!』
末の娘が大好きな絵本です。「電車が大好きな男の子が運転手さんになれて、夢がかなって私もうれしくなった」と話してくれました。
『せいめいのれきし』
この本は筆者自身の思い出の一冊です。宇宙の誕生から現在までの進化の歴史が描かれていて、今でも恐竜や地球誕生のイメージはこの絵本の記憶です。もちろん子どもたちにも買いました。
特に自然科学が大好きな長男、次男はこの本がお気に入りでよく読んでいました。今回も「あれ、あの本!」と長男、次男が言い出しました。長男は「恐竜というとこの本を思い出す」と言っています。この本で次男は「宇宙のすごさを知って、宇宙の図鑑や恐竜の図鑑を見るのが好きになった」と言っていました。
面白かったのは、本棚から出してきたら、長男、次男が次々に「あれ? もっと事典みたいに分厚くて大きかったよ!?」、「重たいからテーブルで広げて見てたけど、両手いっぱいよりもっと大きかったはず!?」末の娘も「本当だ! 小さい」と意外にコンパクトなサイズ驚いていました。
思ったより小さいのは自分たちが成長したから。子どもたちの反応に思わず笑ってしまいました。
子どもたちは、パパ、ママの読み聞かせが大好き!
山口氏の『絵本の記憶、子どもの気持ち』では読み聞かせの思い出についても触れていますが、学生たちは読み聞かせのエピソードを見事に鮮明に覚えていて「“私だけのお母さん”が欲しくて仕方がなかった。それが得られるのが束の間の絵本タイム」、「お昼寝をするときにいつも母に読んでもらったのを覚えています」などと書いています。
パパ、ママの絵本を読む「声と読み方が大好きだった」という声も多数挙がっていたそうですよ。
読み聞かせのシチュエーションそのものも好き
また読み聞かせのシチュエーションそのものも大好きだったという意見も。ママを「真ん中で挟んで兄弟で横になって聞く」と心地よく安心したとか、ママが小さな声で話すので「兄と一緒に息を殺して静かに静かに」聞いていたとか。読み聞かせのシーンが丸ごと大切な思い出になっているようです。
読み聞かせは心から幸せなひととき
パパ、ママがそばで楽しい絵本を読んでくれるということ自体、子どもには心から幸せなひとときのようです。その思いはせつないほどです。
筆者もこの本を読んで、「こんなに思ってくれていたなら、もっともっと、毎日沢山読んであげればよかった…」とちょっぴり後悔してしまいました。もう少し早くこの本に出会っていれば良かったと思いました。
将来、大人になった子どもたちと絵本の思い出話をできたら素敵ですよね! 筆者も子どもたちが大人になったら、もっと深く聞こうと楽しみになりました。そんな日を夢見て、子どもとの絵本タイムを心から楽しんでくださいね!
参照/ 絵本の記憶、子どもの気持ち
ごとうともこ
高校生の男子を筆頭に小学生の男の子と女の子の3人の子どもを持つ40代。長男は中学受験、高校受験を経験。息子は高校受験で見事リベンジ達成しました。3人の子育てを通し、幼児教...
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