2017.06.21
うちの子、ちゃんと話が聞けてる?話が聞ける子になるために幼児期が大切
最近、小学校の先生や教育関係者の間で、“話が聞けない子が増えている”という声を聞きます。
我が子はきちんと話が聞けているのでしょうか?
そもそも“人の話を聞いて理解する”ために必要な能力ってどんなことでしょうか?
聞く力を高めるためには、ママはどんなことを心がければよいのでしょうか?
幼児期が大切といわれる“聞く力”について考えてみたいと思います。
どうして話を聞けない子が増えたの?
理由はさまざまなことがいわれていますが、以下のような背景が考えられています。
言葉を聞くことより話すことを重視している風潮
筆者は言語聴覚士として、ママたちから子どもの言葉の相談を受けることがよくあります。
その多くは“言葉の遅れ”という訴えですが、「うちの子よく聞かないんです」というケースはほとんどなく、「言葉が出てこない」、「単語が増えない」、「二語文にならない」、「発音が不明瞭」など、“話すこと”に関する相談が多いです。
“聞く”ことや“理解”しているかどうかは、なかなかわかりにくいこともあるので仕方がないところもありますが、“難しい言葉を話せる子がすごい”、“長い文を話せる子がえらい”という風潮はありそうです。
実は“話す”力は、“聞く”、“理解する”の上に育ちます。「話す人をしっかり見れて素敵だね」、「よく聞いてるね」といったほめ言葉もかけてあげたいですね。
赤ちゃんの頃から、テレビやアプリなどの視覚的な刺激に多くの時間さらされている
一昔前までは、子ども向けのテレビをやっている時間帯は限られていましたし、子ども向けのアプリなどもなかったので、人とのコミュニケーションが多く生まれていました。
今は、親がその気になれば子どもは一日中バーチャルの世界に浸れます。そこは一方通行の受け身の世界。聞く力は、生のやりとりがあってこそ育ちます。
PHOTO/goodluz/ShutterStock
話しかけられる言葉が命令や指示、禁止ばかりで魅力がない
電車や公共の場所で、周囲の大人からの小さい子への視線が厳しくなったといわれています。また今のママ世代は、自分が育ったなかで、怒られ慣れていない方も増えてきています。
そうすると、必要以上に他人の目を気にしてしまい、どうしても子どもに指示や禁止する声掛けが増えてしまっているかもしれません。
特に元気な子どもの場合、おとなしい子どもと比べると、禁止の声掛けが増えてしまいがち。逆におとなしい子どもに対しては、命令や指示の声掛けが増えてしまうかもしれません。
筆者は自身、指示・禁止・命令は聞きたくないので、なるべくスルーして生きています。それどころか、そういう人とはなるべくつきあわないように自然としているかもしれません。
でも、そんなことができない子どもは、聞きたくないことには、耳にシャッターがおりてしまうかもしれません。ママが怖い顔をして近づいてきたら、別のことに没頭して耳に入らないようにするかもしれません。
子育て中、ついつい多くなってしまう指示・禁止・命令の言葉。もし自分を振り返ってみて、そんな声掛けが多いかもと思ったら、それ以上に子どもが聞きたくなる言葉、ほめ言葉、誘い言葉、興味がわく言葉などを意識してかけていけたらいいですね。
“人の話を聞いて理解する”ことに必要な能力
ひとえに“聞く”といっても、生まれながらにその力が備わっているわけではありません。以下は、言語聴覚士仲間から聞いた内容に、筆者の考えも合わせた必要な能力です。これらのほかにもまだあるかもしれません。それぞれの力を育てていくことが大切といわれています。
1.聴覚や脳の機能に関すること
- 音が聞こえる
- 音が聞こえてくる方向がわかる
- 音を聞き分けられる
- 聞こえてくる情報の中で、必要な情報だけを聞く
- 聞いた内容を頭の中にとどめておく
2.言語理解に関すること
- 単語(文)の意味がわかる
- 文法の意味がわかる
3.コミュニケーション、社会性に関すること
- 人に関心がある
- 待てる
- 落ち着いている
- 相手への気配りがある
- 集中力がある
- 状況をよむ
- 文脈を使える
ここで意外に大切だけど、見落とされがちなのが、3のコミュニケーションや社会性の力の成長です。
筆者のiPhoneで、6歳の娘がときどきSiriさんと会話していますが、Siriさんには1・2の力はありますが、それに比べて3の力が弱いため、会話が成り立ちません。子どもにはそこがおもしろいようですが、横で聞いていると、「こんな会話をする大人もいるな」と思うこともあります。
実は“聞く”というのは、難しいスキルなんですね。