2016.11.15
ことばの発達が遅いのは、子どもへの話しかけが足りないから?今日からできる話かけのヒント
ことばの成長がゆっくりなわが子。“ことばの成長には個人差が大きいというし”とは思っていても、どんどんことばが増える周りの子をみると少し心配になりますよね。
周囲から「ちゃんとたくさん話しかけてるの?」なんて聞かれて、自分を責めてしまうママもいるかもしれません。
本当に、ただたくさん話しかけていれば、ことばは伸びるのでしょうか?
ことばの成長が遅いのは、話しかけが足りないからなのでしょうか?
筆者の言語聴覚士としての経験から、1歳前から2歳くらいの子どもをもつ、ことばの成長が心配なママたちに、今日からできる声かけのヒントをお伝えします。
ことばの成長スピードに差が出やすい理由
人間のすべての成長には個人差があります。ママたちは妊娠中も、その経過はそれぞれでしたよね。生まれてからも、首がすわる、お座りができる、歩き始める、どれをとっても周りの赤ちゃんとまったく同時にできるようになったことはなかったと思います。
それでもほとんどのことは、そう大きな期間の差がなく、ほどなくできるようになり、その都度安心したり喜んだりしていたことと思います。
ことばはどうでしょうか。
運動の発達に比べ、ことばの発達は、生まれ持った性格や家庭の環境など、さまざまな要因が複雑に関係しているので、より発達のスピードに差が出やすいといえます。
また、周りがたくさん話しかけていてもあまり話さない子はいますし、あまり話しかけをしてこなくても、よくしゃべる子どもはいます。
ところで健診などで、「ことばが遅い」と相談されるママのほとんどは、“ことば=話しことば”という意味で使っていることが多いようです。
一方、言語聴覚士など、ことばの発達に関わるものは、“理解あっての話しことば”であり、“コミュニケーションの成長あってのことば”というようにことばを多角的に捉えます。
「わかっているのに話せない」という質問もよく受けますが、理解に比べて、実際にことばとして出るのがゆっくりな場合もあります。
その一方で、子どもの発達の様子をみると“わかっていないし話せない”というケースにも数多く対することがあります。
また、人への興味関心が薄いことで、“ことばを使う”意欲が育ちにくい子どももいるようです。
ことばの成長で大切なこと
赤ちゃん時代はことばの土台を作る大切な時期です。まずは睡眠や食事など規則正しい生活を送り、安定した親子関係を育み、情緒が安定している状態で、体の発達に応じた十分な運動や遊びを行うことが大切です。
これらは一見、ことばの成長とは関係のないことばかりのように思えますが、将来ことばを理解し話していくための脳の働きを育てるうえで、この土台がしっかりしていることが重要になってきます。
この土台の上に、実際の生活の中での豊かな経験や感動から、さまざまな物の意味を知っていくこと、それにはそれぞれ言葉がついていると知ること、相手に注目をしてことばを聴こうとする力や、聴いたことを記憶、模倣していく力が育っていきます。
テレビやアプリを使うのはNG?
よく「テレビやアプリでもことばの勉強になるのでは?」という質問を受けることがあります。筆者の考えとしては、テレビやアプリを子育てに使うことは、使い方によっては有効なこともあると考えています。
第一に、それらを使うことで家事がはかどりますよね。「テレビを子守代わりに使って…」と否定的な意見も聞きますが、忙しいときは使えるものはなんでも使っていいと思います。
夕飯の支度をする際に、足元にまとわりついて危険な目に合わせたり、自分がイライラしてあたってしまうよりは、子ども向け番組を見せて、季節のことや、楽しい歌を覚えてくれたほうがよほどいいのでは?と考えています。
でも、それが長時間続き、他の遊びをやらずに画面ばかりを見て、しまいには、テレビやママのスマホを自分のもののように扱ってしまうのは良くありません。画面の中での知識は増えるかもしれませんが、その知識は一面的であり、実際のコミュニケーションで、相手とのやりとりに使えるものにはなりません。
可能な限り、子守代わりのテレビ、スマホの使用は減らし、例えばテレビを見るのなら一緒に見て、共通の話題でやりとりをする、テレビで見たものを実際の生活の中でも見つけてみる、手遊びや体操、工作を実際にやってみるなど、親子のやり取りのツールとして使えるとよいと思います。