2015.10.13
『ママの “はたらく” と “くらす” を考える』トークセッションレポート(後編)
2015年8月1日(土)、2日(日)に開催された、環境省『ウォータープロジェクト』主催の「Water Day FESTIVAL」×『JAPAN FAMILY FESTIVAL vol.2(ジャパンファミリーフェスティバル)』。
イベント内で、ライオンのキレイキレイ(バイ菌とたたかうプロジェクト)と一緒にエリア展開されたプロジェクト『ママのはたらくインフォメーション』では、子どもをもつママの “はたらく” と “くらす” について考えるためのトークセッションを開催しました。
前編 “はたらく” トークセッションに続き、後編 “くらす” トークセッションレポートをお届けいたします。
“はたらく” と対である “こころと身体” の大切さとは?
働くママにとって “はたらく” と “くらす” のバランスは大きなテーマです。
“はたらく” 先にある生活の豊かさを実現するため、特に産後のママに起こる変化や、生活面で気を付けておきたいことについて、こころと身体のケアに関するスペシャリストからお話がありました。
“くらす” トークセッションでは、ファシリテーターに「クリエイティブマムズリンク」佐藤にのさんを迎え、働くママのための生活実用誌「CHANTO」より山岡朝子編集長、女性が輝く人生設計のためのアクションを手がけるプロジェクト「ウーマンライフプランニング」戸田さと美さん、理学療法士(ペリネケアアドバイザー)の大林松乃さん、「株式会社パワーウーマンスタイル」代表取締役を経て、現在は輝く女性をテーマに多用な活動を展開する伊藤香織さんが登壇されました。
それぞれの立場からみるママの「こころと身体」について
先日発行した8月号で “こころと身体” を特集した「CHANTO」。仕事を持ち、子育てをするママたちの姿を追う中で、山岡さんは「家族の健康には気を遣うけれど、自分を後回しにするワーキングママが多い」と指摘されました。
「見られる傾向としては、まず睡眠時間が圧倒的に足りない、子どもの食事を優先し自分はちゃんと食べていない、仕事と家事に追われて疲労困憊なのに助けを求めない、ストレス要因が多いのに発散の場がない…などです」
「最新号では、各分野の医師、カウンセラー、専門家の先生たちに監修していただき、主に『睡眠不足』『栄養不足』『運動不足』『ストレスケア』の4つについて、解決法を提示するなどでこころと身体の健康管理を特集しました。
一人で何もかも抱えることが多いワーキングママだからこそ、誌面では、単に時短家事のノウハウを提供するだけでなく、自分のこころと身体を見つめる視点を発信したかったのです」
中でも反響が大きかったのが『折れないこころの育て方』という記事。ストレスを感じた時に気持ちを上手にスイッチするためのノウハウの中「は、ひ、ふ、へ、ほ」を紹介したそうです。
- は … 半分でいい
- ひ … 人並みでいい
- ふ … 普通でいい
- へ … 平均でいい
- ほ … ほどほどでいい
周りの人にいつも「ごめんなさい」と罪悪感を抱きながら働くママは、“身体の健康” もさることながら “こころの健康” についての関心も高く、ケアを求めているようです。
全国の働くママのお悩みは『時間のなさ』
株式会社パワーウーマン代表取締役を経て、全国各地のママと接することが多い伊藤さん。特に働くママたちの声のうち、どういったお悩みと向き合ってこられたのでしょうか?
「パワーウーマン時代の話になりますが、登録会員の多くが、子育て中の30代ママ起業家さんでした。子育ても、家事も、仕事も、と毎日フル回転な中で、『自分のための時間がない』『あらゆることを効率よくするための方法を知りたい』と、よく尋ねられました」
「皆さんとても向上心があり勤勉で、それってとても素晴らしいことなんですけれど、私個人としては『ちょっとだけ深呼吸しませんか?』って、よくお伝えしていました」
「ママという固定概念にとらわれず、やるときはやり、抜くときは抜く。全部完璧にできなくてもいいんです。笑顔になる時間を作ることでこころに柔軟性がうまれ、身体とのバランスも取りやすくなるのではないでしょうか」
頑張りすぎるママたちこそ、力をふっと抜くための心構えが必要なのですね。
不調に気づき、予防につなげるための正しい知識とは
戸田さんが立ち上げた「ウーマンライフプランニング」プロジェクトは、女性が抱えるこころと身体のバランスに向かい合うアクションを行っています。
「働くママとして、ママと社会・企業をつなぐマーケティングPR会社を展開しながら、“こころと身体” のバランスと、自身と向き合う事の大切さに気づきました」
「男性社会において自分を追い詰めるように生きるママですが、身体の仕組みは大変デリケート。例えば、生理前のイライラや倦怠感、生理痛などを含め月経に影響が出ることがあります。これは、自分でも気付かない問題がこころにあることも多いんです」
日本では、身体の仕組みや女性のホルモンバランス・月経・性について、大人女性が正しい知識を持つ機会があまりありません。身体の知識を得ずに働きママになりますが、やがて身体とこころのバランスが取りにくくなるケースが増えているそうです。
「気づいたときが “手遅れ” でないように、正しい知識を持ち “気づき=予防” に変える考え方が大切です」と結ぶと共に、自分に向き合うためのセルフケアとして「“大きく吸ってしっかり吐く” を毎朝10回×3セット」行い、こころの状態をリセットする方法を教えてくださいました。
ペリネケアの概念と、セルフケアの大切さ
女性の身体について、理学療法士として活動しながら、特に産後のママのケアに力を入れているというペリネケアアドバイザーの大林さんは、「妊娠・出産で受けた身体のダメージは、様々な症状の原因」と説きます。
「子宮のある骨盤周囲の関節や骨盤底(ペリネ)へのダメージは、尿漏れや子宮脱など女性特有の症状の元になりやすいのです。40代女性の3人に1人は尿漏れ経験があると言われています」
産後ケアの先進国であるフランスでは、産後にダメージを受けた骨盤底をしっかりとケアすることが国全体で認識されています。日本ではリハビリに携わる理学療法士などが活動を始めていますが、医療分野において産後ママの身体ケア療法が確立されていないのが現状です。
「骨盤周囲の機能が低下することで起こる症状の多くは、閉経後、女性ホルモンが低下する更年期以降に問題になりやすい傾向があります。 尿漏れで旅行や外出がおっくうになったり、大好きなスポーツが楽しめなかったり… と、生活のクオリティーに影響することもあるのです」
産後ダメージ回復! 骨盤底筋を無理なく鍛えるセルフケア
大林さんに、産後ダメージを受けた筋肉の働きを活性化させるセルフケアを教えていただきました。
<骨盤底筋活性化のためのセルフケア>
- 手のひらを上に向け、お尻の下に入れる。 この時、硬い骨(坐骨)を確認する
- 背中を真っ直ぐにし、身体を前に倒す。 この時、坐骨の下にある手のひらが、お尻の後ろから抜けるぐらいまで倒す。
- 手が抜けたら背中を真っ直ぐにしたまま、身体を起こす。
- 両手を上に伸ばし、顎を引いて真っ直ぐの姿勢をキープ。
- おしっこを我慢するように骨盤底の筋肉を引き締めた後、お腹を凹ませながら息を吐き切る。 硬くなった下腹部(腹横筋)を意識する。
- 姿勢のとり方がわかったら、両手を下ろした状態でも行ってみる。
坐骨で正しい位置に座り、腹横筋を働かせることで、妊娠中に割れて左右に広がったおなかの筋肉(腹直筋)をきれいな位置に戻します。また深い呼気によって横隔膜が上に引き上がることで、産後ダメージを受けた骨盤底の筋肉の動きを活性化させることができます。
まとめ:自分のことを、ちゃんと気にかけてあげよう
自分と向かい合う時間を持つことは、健やかな毎日を過ごすことにつながります。家族との時間を楽しむことができるよう、正しい知識を知る必要があると誰もが感じながら、実践できていません。
ママの毎日は「衣食住」+育児の積み重ねであり “はたらく” と ”くらす” で成り立っています。どちらも欠かせないからこそ、どちらにも丁寧に向き合うことで、ママや家族一人一人が思い描くライフスタイルの実現に近づくのではないでしょうか。
皆さんも、ママの一生において重要な ”はたらく” と ”くらす” について、ぜひ考えていただければと思います。
文/クリエイティブマムズリンク 中村康子
写真/ジャパンファミリーフェスティバル・ママのはたらくインフォメーション
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